1953年、国連総会で「原子力の平和利用」が世界に発信されて以降、「夢のエネルギー」として国を挙げて取り組んできた原子力発電。
<夢のエネルギー開発が明るい未来を創る>。
これを信じ、原発の安全を信じてきた私たち。
でも、その夢は2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の、発電史上最悪の事故によって、無残に砕かれることになりました。
しかも、それは、地震・津波によって瓦礫に埋まったままのまだ生きているかもしれない人々を放置して故郷を後にするという経験したことのない災害という形になって私たちを苦しめることになってしまったのです。
故郷を追われた人々は今も苦しみ続けています。それでも再稼働を推し進めようとする政府と行政。
何がそうさせるのか、新規制基準によって再稼働することにはどんな問題があるのか。どんな利益があるのか。
丸2年の歳月をかけて、弁護士河合弘之と盟友弁護士海渡雄一、訴訟を共に闘う木村結の3人は、いくつもの裁判を闘いながら、多くの被災者に向き合い、有識者と語り合い、故郷を手放すことになってしまう災害とは何かについて、真実の声を聴き続けてきました。
私たちは原発で幸せですか?
原子力発電の場合、水を沸騰させるためにウランを核分裂させてエネルギーを得ているというところに何よりも根本的な問題があります
【プロフィール】
1949年生まれ/京都大学原子炉実験所助教/京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助教
電力会社というのは、実は経済界全体を
支配できる会社なんです
【プロフィール】
古賀茂明政策ラボ代表/大阪府市統合本部特別顧問/元国家公務員(経済産業省)
僕は一生懸命原発を作るということイコール
安全だと思っていたんですよ
だから僕も手は抜かなかったんです
【プロフィール】
元原子炉設計技師/元国会事故調査委員
2012年の地球上の総発電量は、
風力と太陽光を足すだけで原子力の発電量を追い越した
【プロフィール】
「環境エネルギー政策研究所」所長
原発の話やエネルギーの話は、耳慣れない用語が多めで少々わかりにくい。
有識者の話への理解を深めるには、ちょっとした用語チェックをしておくことがおススメだ。
このドキュメンタリーで使われているいくつかの専門用語のうち、特に重要なもの4つをご紹介しよう。
総括原価方式
総括原価方式とは、料金収入を“適正な原価”に従って決めることができる特定な公共事業を行うものに認められた会計方法である。消費者庁HPの「平成25年版消費者白書」第一部、第4章、第2節に「消費者政策の主な進展」より一部を抜粋する。――公共料金の在り方については、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故が電気料金に与える影響をめぐる議論を契機に、国民生活における公共料金の重要性が改めて認識されるようになり、消費者庁では「公共料金に関する研究会」を開催し、東京電力からの家庭用電気料金値上げ認可申請の手続きの過程で得られた認可プロセス、総括原価方式等における諸課題を踏まえ、公共料金の水準・内容や料金改定の手続き等について2012年11月に報告書を取りまとめました――このHPには総括原価方式の功罪も示されている。(下表は消費者庁図表を参考に作成)古賀氏はインタビューで原子力ムラ存続の鍵は<総括原価方式>にあると語った。消費者庁が示す“コスト削減が働かないデメリット”は、削減どころ誰かの利益まで上乗せする形にすり替わってしまい、多くのムラ人のメリットとなっているのだ。
メリット | デメリット |
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立地指針
『原子力規制委員会』の「原子力安全委員会安全審査指針集」というweb上PDF(右図より該当ページへの外部リンク)は「旧原子力安全委員会」より提供された情報ですという注釈があり、「旧組織等の情報」というタブの中で、今も確認ができる。基本の立地についての話であるから、指針類のイの一番にその項目はある。Ⅰ.安全審査指針類1.発電用軽水型原子炉施設などに関係するもの(1)立地「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」である。
昭和39年5月に決定され、平成元年3月に一部改訂された文書だ。
青木氏が指摘する通り、立地の基本的な考え方に続き、<立地審査の指針>として「原子炉からある距離の範囲内は非居住区域であること」、<その距離>は「その人に放射線障害を与えるかもしれないと判断される距離までの範囲をとるものとし「非居住区域」とは、公衆が原則として居住しない区域をいう」と記されている。 そして、<その距離>とは該当文書において「甲状腺(小児)に対して 1.5Sv/全身に対して 0.25Sv」と定められている。更に、その外側に同心円状に低人口地帯の設置を定義しているが、この非居住区域を含む立地に関する設定が、新規制基準では記載されていないのである。
新規制基準
『原子力規制委員会』HPより以下引用
「今回の新規制基準は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省や国内外からの指摘を踏まえて策定されました。以前の基準の主な問題点としては、地震や津波等の大規模な自然災害の対策が不十分であり、また重大事故対策が規制の対象となっていなかったため、十分な対策がなされてこなかったこと、新しく基準を策定しても、既設の原子力施設にさかのぼって適用する法律上の仕組みがなく、最新の基準に適合することが要求されなかったことなどが挙げられていましたが、今回の新規制基準は、これらの問題点を解消して策定されました。」とあります。
『原子力規制委員会』HP掲載:実用発電用原子炉及び核燃料施設等に係る新規制基準について【PDF:1.9MB】
※右図を含む<新規制基準>についての説明文書
■弁護士青木秀樹氏へのインタビューから~新基準は旧基準の欠陥を是正したかについて指摘~
①旧)立地条件が審査基準になっていなかった。新)立地指針が新基準の中に存在していない。また、立地指針を廃止するとも表示されていない。②新)にはシビアアクシデント(SA)対策が新設されているが、大規模自然災害対策(同時多発故障対策)がほとんどみられず、格納容器損傷・使用済み燃料プール損傷の対策はないに等しい。③新)にテロなどによる大規模損壊に対し示された具体策は放水のみであるなど、新基準が旧基準の欠陥を是正したと言うには不十分であることを示した。
最悪シナリオ
3.11当時、菅元総理の依頼を受け、近藤駿介元原子力委員会委員長によって作成、提出されたのが通称『最悪シナリオ』と呼ばれる報告書で、タイトルに『福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描』(平成23年3月25日)とある。地震・津波による全電源喪失によって始まった原子炉の崩壊は、3月12~16日にかけて1号機から4号機で爆発・火災・白煙を生じさせた。放水と5・6号機の非常用電源の確保が行われる中、21日には2号機から黒煙、3号機からは白煙が認められ、関東広範囲に亘って高い空間放射線量測定値が計測された。続く23日、SPEEDIの試算値が初めて公表された頃、1号機では温度上昇が懸念されていた。『最悪シナリオ』が官邸に提出された3月25日は、そういうタイミングだった。菅直人元首相のブログには「今回の原発事故で避難している人は16万人。しかし、最悪のシナリオのように首都圏全体から3000万人が避難した場合、避難者数でも200倍だから、東京の地価を考えれば損害は200倍をはるかに超える。200倍と計算しても1200兆円ということになる」とある。首都圏からの避難は避難者数の膨大さに加え、国の経済の根幹をなす首都圏地価の大暴落も招くのである。
要するに最悪の場合、首都圏の壊滅≒国の滅亡となるおそれがあるということである。
運転差止訴訟
刑事告訴・告発
原発賠償問題
東電株主代表訴訟
@hairoactionのTwitterプロフィール:大飯から原発を止める会
2011年3月、福島に初めて作られた原発が運転40年を迎えます。40年―これは原発の当初の設計寿命です。これから私たちは、様々な問題を抱える「廃炉の時代」を生きることになります。この時代を、私たちの生命をつなぐ希望の未来にしていくために、原発に依存しない地域社会、エネルギーと私たちの暮らし・・・一緒に考えてみませんか!
製作・監督:河合弘之 構成・監修:海渡雄一 制作協力:木村結 音楽:新垣隆
脚本・編集・監督補:拝身風太郎 撮影:中島喜一 制作・配給:Kプロジェクト
【お話を伺った方々】
佐藤暁 崎山比早子 小泉純一郎 細川護熙 近藤駿介 木元教子 青木秀樹 飯田哲也 大島堅一
古賀茂明 田中三彦 馬場有 小出裕章 武藤類子 アナトーリー・チュマク 避難生活を送る方々 河合弘之 海渡雄一 木村結
上映時間:2時間18分 制作年:2015年 制作国:日本 制作:Kプロジェクト