『日本と原発』トーク

映画の感想: 哲学者 小川仁志氏

17/02/17

なぜ日本だけが自然エネルギーに転換できないのか

疑うことができる強靭な「知」、変わることができる強靭な「心」

哲学者 小川仁志

 

 「日本と再生 光と風のギガワット作戦」を観て、ようやく謎が解けた。なぜ日本だけが自然エネルギーに転換できないのかという謎だ。それは、日本人には二つの大事な性質が欠けているからにほかならない。一つは物事を疑うための性質。もう一つは変わるための勇気。

 

 日本人は、自然エネルギーが不安定で非効率だという固定観念をどうしても疑うことができない。ヨーロッパの転換が早かったのは、やはり哲学の伝統のおかげで、固定観念を疑うことに慣れていたからではないだろうか。

 

 しかし、仮に疑うことができて、真実を知ったとしても、日本人にはなかなか大きな転換をする勇気がない。映画の中でも、コペンハーゲンの技術・環境市長モーテン・カベル氏がいっていたが、変わるためには勇敢になる必要があるのだ。

 

 実際、映画に登場する自然エネルギーへの転換に成功した日本人は、皆疑うことができる強靭な「知」と、変わることができる強靭な「心」を持ちそなえていたように思われる。自然エネルギーにかかわる人のことをあたかもプリミティブであるかのように揶揄する声があるが、それはとんでもない間違いであることがこの映画を観ればわかるだろう。彼らは原始的だから自然エネルギーに転換したのではなく、より賢いから転換することができたのである。

 

 自然エネルギーのメカニズムは賢くないと理解できない。プリミティブではなくむしろスマートなのだ。その意味で、自然エネルギーは人間の知あるいは技術と、自然のリソースが史上初めて弁証法的に止揚を成し遂げた成果であるということができる。

 

 賢い人たちが安易に原発に頼らず、懸命に知を働かせた結果、自然の女神はようやく私たち人類に光と風の手を差し伸べようとしてくれているのだ。その手を握るのか、それとも背を向けるのか、それは私たちの「知」と「心」の強度に委ねられている。

 

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